土壇場の恋・あなたならどうする?
第2章 序章 ―― きっかけ
時刻は午後11時45分。
いつも通りに、そろそろ閉店の用意をしようと
厨房へ向かいかけた時、
カラン カラン カラン ――――
晴彦が入って来た。
「ちーっす」
それまでレジで今日の売り上げを集計していた
店長が作業を終え、
その売り上げの入ったサイドバックを小脇に抱え、
レジカウンターから出たところだった。
「よう、いらっしゃい、最近見なかったけど
何かあった?」
「いやぁ~、それがさ、インフルにヤラれちゃって
丸々1週間アパートで唸ってた」
「そいつぁ災難だったね。じゃ、ごゆっくりどうぞ。
ツナくん、後頼んだよー」
「はい、お疲れ様でしたぁ」
店長は出て行った。
「―― で、何か用?」
「何か用かって? それが客に対するこの店の
接客かよ」
「よく言うぜ。
いっつも閉店間際に来てタダ酒飲んでく
だけのくせしてっ」
晴彦は ”へへへ ――”と、
ふざけた笑みを洩らしながらカウンターに入って、
勝手に生ビールをジョッキに注いで飲み出した。
ほ~らね、やっぱりだ。