
オオカミは淫らな仔羊に欲情する
第21章 合コン
「あ~ら、絢音じゃない。今晩わー。久しぶりね」
背後から女性の声が聞こえてきた。
――女連れかいっ?!
スッとセンセの隣に現れたのはモデル並みの美女。
彼女はうちの姉ちゃんと同級生で、
その当時のミス京都。
田村 静流(たむら しずる)さん。
「東京へは出張で来たの。時間があったらお茶でも
しましょうね」
先輩はにこやかに微笑み。
センセは肩を竦めたあと、
私に視線を向け「じゃ、また」と言って、
静流先輩と去って行った。
もう会計は済んでいるようで、センセはレジ前の
店員に会釈だけして通り過ぎた。
きっといつも、女が席を外した隙に支払を
終わらせているんだろう。
あれやこれやで目が回るくらい忙しいって、
言っていた割りには余裕ありじゃん?
今は毎日美女と食事をする期間なのだろうか?
そりゃ、他人事にまで手が回りませんわねぇ。
合コンは全体的に盛り上がらないまま
お開きとなった。
得意げにあちらの幹事が
「女子の皆さんは3千円でいいから」と言った。
あっちは男でうちらの倍以上は飲んでいたと思う
のだが、同額3千円だった。
割り勘で払うのって得意気に言うようなことか?
解散した後、案の定利沙が耳打ちしてきた。
「まさか、あんたの相手が ”鬼の各務” だった、
とわねぇ~」
「あ、センセと私はそんな関係じゃ……」
顔を耳まで真っ赤にしての否定じゃ、
説得力皆無だ。
「私にまで隠さんでもよろしわ」
「……」
「や~、また赤くなってる~。ホントあんたって
分り易いね」
「……」
ポケットの中のスマホが振動する。
スマホの画面を見ると……各務竜二の名前があった。
その文面には
『ちょうどお互い、食事終わったところ?
時間があったらコールしてくれ』とあった。
……という事は、先輩との二軒目は
なかったということだ。
何気に嬉しい。
でも、メールにリプライはしない。
そのままスマホをバックにしまった私を見て
利沙が眉をひそめる。
「返事くらいしてあげなよ」
「あーぁ、お腹空いた。食べ直そ? 利沙」
私はさっさと店の中へ戻った。
