
オオカミは淫らな仔羊に欲情する
第28章 試練
一体誰が?
絢音と元・同級生の裕がかなり深い交際していた事を
知る人間はごく限られている。
それに、あの忌まわしい出来事じたいが既に風化し
知っている人々の脳裏からも消えていると思われる。
なのに、今更誰がどうしてこんな事を……。
その2枚を手に呆然としていると、
後ろからヌゥーっと手が伸びてきてその2枚を
鷲掴み自分のポケットへ押し込んだ。
「りさ……」
「大丈夫。私がついてるから」
どんな時も一番の理解者で支持者で、
必要な時は叱咤激励してくれる。
頼もしい親友。
利沙は紙をぐしゃぐしゃに丸めると
神宮寺さんの席へ向かった。
神宮寺さんは他のクラスメイト数人と愉し気に
べちゃくちゃ喋っている。
利沙の接近に気が付くとそれらは一斉にお喋りを
止めた。
「……別に知られてマズイって事はなかったけど、
こんなやり方いけ好かんな」
「へ~?? 何のこと?」
神宮寺さんはニヤけた笑いを浮かべすっとぼけた。
「この際だから、他に何か言いたい事
あるなら聞いておこうか」
利沙はポケットへ押し込んだ2枚を丸めて
神宮寺さんへ向かって思いきり投げつけた。
