
オオカミは淫らな仔羊に欲情する
第33章 偶然
「りゅうじさ……」
「―― 呼んだか?」
「えっ?!」
すぐ隣から聞こえてきた懐かしい声に驚いて
隣を見る。
四発~五発と次々に打ち上げられる
花火の明かりに照らされ、浮かび上がる竜二の顔。
竜二はまた逃げ出される前に絢音の腕を掴んだ。
「離して」
「嫌だ、離したら絢音はまた逃げる」
「もう、あなたには会わないって決めたんだもん」
竜二は絢音の腕を掴んだまま、人気のない場所を
探す。
しかし、こんな祭りの夜に、
人気のない場所なんかあるハズもなく。
結局竜二は自分の車へ向かった。
*** *** ***
俺は逸る気持ちを必死に抑え
絢音に「少し話さないか?」と、問いかけた。
話してしまったら……怖かった。
自分を制御出来なくなりそうで……
全てを投げ出してしまいそうで……
けど、俺はもっと強くなると心に誓った。
今よりもっと強くなって、
愛しい人は自分の力で守り抜くと決めたんだ。
「……あや?」
絢音は促されるまま助手席に乗った。
