
オオカミは淫らな仔羊に欲情する
第10章 新天地・東京へ
3階にある教室に入ると、
本日1時限目”古文”のヒヨリンこと日景先生は
まだいらしてなかった。
ラッキー。
いつものように私の席を確保してくれていた、
クラスメイト森下利沙に『おはよー』と
挨拶しながら、その席に着く。
すると、利沙が声をひそめて言ってきた。
「みーちゃった みーちゃった。あんたさ、いつの間に
ダサみと知り合ったん?」
「え? ダサみ?」
利沙の座った位置からは、窓から職員用駐車場が
良く見えて、今そこでは、あの非常勤講師が
校舎に向かって歩いてくるところだった。
「ダサみこと、各務竜二・33才」
ダサみ ―― ククク……ッ、凄いネーミング。
「べ、別に、知り合いたくって、
知り合った訳やないよ」
そこで、あいつの車に泥ハネされた経緯を
コートのシミを見せながら説明した。
「―― ってな訳」
「そりゃまぁ、朝も早うから災難やったねぇ」
