オオカミは淫らな仔羊に欲情する
第2章 家族について
玄関ドアがバタン! と開いて、口にトーストを
銜えたままの初音が通勤のカバンを小脇に抱え
口の中でモゴモゴ『いってきま~す』と言い
飛び出してゆく ――。
『――ね~ぇ、千尋さぁんいいでしょ~う?』
*** ***
朝のダイニングキッチン。
ダイニングテーブルにつき
1人のんびりシリアル+ミルクの
朝食をとっている初音の婚約者・橘 千尋。
自室から絢音が登校の身支度を整え出て来て。
「帰りは和美のお兄ちゃんが責任持ってちゃんと
家まで送ってくれるの」
「お前も早く出ないと遅刻なんじゃない?」
絢音は自分の話しに一向に無関心な橘の態度に
やや憮然としながらも、橘へのお強請り続行。
「遅くなるっていっても必ず12時前には帰るわ。
それにこうゆう付き合いパスするとクラス中から
ハブかれちゃうもの」
「その程度でハブくなら”どうぞご自由に”って
言ってやれ」
と、新聞紙を持ってトイレへ。
「千尋さんは最近の若者事情知らないからそんな事
言えるのよっ」
トイレの中から橘のめっちゃ機嫌悪そうな声が
飛ぶ。
『あんまり四の五のうるせぇーと、
当分の間外出禁止にするぞ』
「可愛い義理の妹がクラス中からハブかれて
孤立してもいいのっ?!」
『やかましいっっ!!』
絢音はトイレのドアを蹴っ飛ばし。
「千尋義兄さんなんて大――っ嫌い!」