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my destiny

第15章 Accident 2

【智side】

多分まだ、オイラの顔には気づかれてない。
話が出来るかもしれない。


「お兄さんさぁ、今日神社に行ったでしょ」

「え…?」

「オイラ達もそこに居たんだよ
ボンちゃんの奥さんの安産祈願で」

「…バカボンの子供は確か」

「うん、地震の前に亡くなってる
二人目を授かったんだよ」

「二人目…そうなんだ…
良かっ、たなぁ…
アイツ、喜んだべ?
一人目の時だって、
結婚して何年も経ってからやっとだったんだ
そうか、二人目…
そうか…」


呆然と座ってるスウェットのズボンを見たら、点々と汚れがついてる。

この身なりってことは、まともに働けてないのかな。
気持ちが荒むと、服とか構わなくなるし。
ガソリンの臭いが凄いのは、溢して体についたのかも。

デッキの隅っこには、乗り込んだ時に吹っ飛ばした紙袋が放置されてて。
中からペットボトルが見えてる。

「何か、奥さん調子悪くて入院してたんだ
だから今日はお見舞いに来たの
急に陣痛が始まったって連絡があって
そんでオイラ達神社に行って
お兄さんのこと見かけた」

「…………」

「お兄さん、服にガソリン溢した?
臭い凄いから、神社でもあれっ?って思って
ホームで見た時も臭いですぐわかったよ

オイラ、なんでか知んないけど、
ボンちゃんの知り合いかな、って思って
そしたら、わかんないけど
止めた方が良いと思ったんだ
突き飛ばしてごめんね」


オイラが話してる間、お兄さんはずっと下を向いてたんだけど。
言い終わったら、はぁ~って凄い大きな溜息をついた。
それから、頭をガシガシと掻いて言った。


「おまえ、次の駅で降りな…
いろいろ悪かったな…
ケガ、大丈夫か?」

「あ、うん」

オイラ、話しながらずっと足と腰さすってたみたい。
お兄さんに言われて気がついた。

悪い人じゃないんだな、って思った。

ふとドアの窓から外を見上げてみると、なんとなくスピードが遅い気がする。

レールに沿って塀みたいなのが続いてるから、景色は見えないけど、恐らく普通よりゆっくり走ってる。

翔君だ。
きっと翔君が、何か働きかけをしたんだ。

思った時に、上着のポケットに入れてたスマホから、メールの着信音が鳴った。

会話が途切れたところだったから、やけに大きく響いて。

お兄さんも気がついて、オイラをじっと見た。


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