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my destiny

第9章 Scar

【智side】

神様とエンケンさんが出てくる夢は、あれからも時々見てる。

夢の中では、前に二人と話したこともちゃんとわかってて、話が続いているのに、目が覚めると全部忘れてしまってるのがとても不思議だ。

大抵ドラマのセットに居るんだけど、オイラはいつも演じた当時の衣装を着てて、神様とエンケンさんは最初に会った時と同じ服装のままだった。

別にいいんだけど、セットと登場人物がちぐはぐなのが違和感があって、ためしに前回会った時、次はドラマの登場人物で出て来てよ、と言ってみた。



今回、いつもの階段を昇ってたどり着いたところは、恋に不器用な社長をやった時の執務室だった。

「お~、メダカがいるじゃん」

ハートの目をした招き猫も居た。
ちょっと前のはずなのに、もうずいぶん昔のことみたいだ。

この仕事をしていると、季節も感じなくなるし、いつも先を見越して収録だったり取材を受けてるから、時間の流れが分からなくなる。

毎年毎年、有難いことなんだけど、誕生日もかなり前の段階で収録の際に祝っていただいて、ケーキのロウソクを何度も吹き消すから。

本当の誕生日が来ると、やっとこの話題が終わったんだな、ってホッとするくらいだ。

それで、気がついたら今の年齢になってた。


「社長」


いくつまで今の仕事をやれるんだろ。
映画の共演者に言われたけど、80歳のアイドルってのもねぇ。

オイラはまあるいメダカの水槽を眺めながら想像する。

翔君は待つ、って言ってくれたけど、オイラはもっと早い方がいいかな。

80歳までやってたとして、そしたらきっと歩くのも大変だし。
ファンの子も同じぐらいの年齢になってるだろうから、やっぱりちょっと大変だよね。

ライブ会場に救急車をいっぱい配備しないといけない。

っていうか、その年になってもファンでいてくれるのかな。


「社長!」


あ、でも、お子さんとかが大きくなってて、孫とかも居て、一緒に付き添いで来てくれたりする?

三世代でうちわ持ってさ。
キャーキャー言ってくれるかも。

ふふっ、そんなの見たら泣くよ、俺は。

いや、笑っちゃうか。

俺たち5人の方がもう立っていられないよ。




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