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Happiness day

第17章 Bittersweet 

明るくなりつつある空
少し急いで海辺に向かう

「間に合った」

「もう少しかな?かなり明るくなって来てるよね」

俺たちの前には、日の出を待つ人々の姿 
少し距離を取って、ふたり寄り添って海を眺めた

水平線の辺りは明るくなってるけど、太陽はまだ顔を覗かせてない

「雲ひとつないから、綺麗な日の出が見られそうだね」

「んーっ!楽しみ〜!」

そう言ってはくれるけど、翔くんが僅かに震えてる

「翔くん、寒い?」

ただでさえ一番冷える時間帯
海からの風で寒さが増す

翔くんに、事前に海に来る事を伝えていたら、もっとしっかりと寒さ対策が出来たかも

俺がビビったせいで翔くんに寒い思いをさせちゃったかな…

「うん、ちょっとね。でも大丈夫」

震えているのは隠しようがないもんね
それでも『大丈夫』って微笑んでくれるキミが愛おしい

繋いでいる手を、そのままコートのポケットに突っ込んだ

「こっちの方があったかいだろ?」

「うん…智くんの体温が伝わってくる」

嬉しそうに微笑んだ翔くんの顔を、陽の光が照らし始めた

翔くんもその事に気付いたのか、ふたり同時に海を見た

「出て来た、太陽!」

「凄〜い!おっきい〜、綺麗〜」

子供のようにはしゃぐキミ
寒い思いはさせちゃったけど、一緒に来られて良かった

翔くんの方を見ると、朝日に照らされた瞳がキラキラしてる

うん、本当に綺麗だ
何度キミに惚れるんだろう

「見られて本当に良かったぁ…
今年一年いい事ありそう、ね?智くん」

同意を求めるように、翔くんがこっちを向いた

「智くん?」

無言でキミを見つめる俺を、首を傾げて見つめ返すキミ…

ゆっくりと距離を縮めていくと、キラキラと輝く瞳が翳っていく

そっと押し当てて、離れる唇…

初めてのキスは、ほんのり苦くてとっても甘い

瞼を伏せるキミに返事を返す

「うん…いい事が沢山ある年になるよ」

耳を真っ赤に染めたキミが、俺の手をギュッと握り小さく頷いた

良い年になるのは、間違いなさそうだ。


〈end〉

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