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君の光になる。

第9章 手紙

「夕子、あなたにハガキが届いてるわよ」
 
 そのハガキが届いたのは、安倍の美容室に行ってから三日後だった。
 
「誰から……?」
 
「……で、変なのよ……。裏は真っ白で全部点字で書いてあるの」
 
 夕子はハガキを手に取り、指先で撫でる。
 
 ――ボ、ク、ハ、キ、ミ、ノ……。
 
 一行だけの文章の下には『アベヒカル』と打ってあった。
 
「…………ふふふ、……バカ……」
 
 ――安倍さん、点字、いつの間に勉強したの?
 
 胸がいっぱいになる。涙が湧き上がる。
 
「何て書いてあるの?」
 
 母親が身を乗り出して、夕子の手元を覗き込むのが分かる。

「君の……君の光になる……だって……」
 
「きゃ、それラブレターじゃないの?」
 
 母親の温かく筋張った手が、夕子の手を包んだ。

 ――会いたい。安倍さんに会いたい。

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