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君の光になる。

第10章 ラブホテル

 夕子は安倍に促され、ベッドサイドに腰掛けた。固いクッションが夕子の腰を受け止める。
 
「あの……どんな感じですか。ホテルの中って……」
 
「えっと、シンプルですが、かなり広いワンルームという感じです。ここのベッドから見て十二時の方向の右手には革張りのソファーのある応接セットと大型の液晶テレビがあります。九時の方向にガラス張りのバスルームがあって……この部屋の天井は鏡張りになっています……」
 
 九時や三時とは方角を時計に見立てた表現だ。十二時が正面、九時が左手――夕子は頭に部屋を思い描いた。
 
「鏡の天井とガラスのお風呂……ですか?」
 
 夕子が天井を仰いだ。手のひらが自分の頬を包む。
 
 安倍がベッド腰を降ろした。固いクッションのバネがフワリと揺れる。
 
 耳を澄ませる。音は安倍と夕子が呼吸する音、エアコンのモータの音、そして安倍の方から聞こえる手足を動かした時の衣擦れの音だ。
 
「安倍さん、少し寒いです……」
 
「大丈夫ですか。少し濡れてしまったので……」
 
 安倍の手が夕子の手を包む。安倍の肌の温もりが手のひらに広がった。その手のひらが包み込んだ夕子の手を柔らかく擦る。
 
「あ……」
 
 背をスッと引かれ、安倍の筋肉質の胸に抱き留められた。苦しいくらいに鼓動が速くなる。夕子は安倍の胸に耳を寄せた。
 
 ゴゴゴーゴーと、安倍の力強い拍動が聞こえる。
 
「聞こえますよ。安倍さんの心臓の音……」
 
 安倍の腕が強く夕子を引き寄せる。

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