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君の光になる。

第2章 再会

 トニックシャンプーの匂いの男性に合ってから一ヶ月が経とうとしていた。
 
 シャーシャーと、どこかから蝉の声が聞こえる。風はほとんど感じなかった。白杖を持つ右の手の甲がジリジリと熱い。ボンヤリと見える光が眩しい。夕子は毎日のようにあの一番線のホームで待った。雑踏の中で。トニックシャンプーの匂いを待つ。
 
「一番線の電車が発車します……」このアナウンスを合図にホームを降りることにしていた。
 
 ――さあ、帰ろ……。

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