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女忍者(くのいち)忍者狩りに遭う。

第2章 小さな茶屋

「ああ、私……」
 
 声が出なかった。
 
「ああ、気づいたのね。これ、飲んで……」
 
 茶屋の娘さんなのか、面長で色白の女性が急須からお茶を注いでくれた。忍びは自分の携帯したもの以外口にしない。毒を盛られるかもしれないからだ。
 
 喉が渇いていた。ゴクリと生唾を飲み込んだ。
 
「いえ、喉は渇いていませんから……。お気遣いなく」
 
「ふふふ、じゃあ、これなら信じてもらえるかしら……」
 
 私に淹れた茶碗で娘さんが二度、三度とお茶を啜る。娘さんは「はあ。美味しいわ」と息を吐いた。コクンと娘さんの白い喉を通る音が確かにした。
 
 私は娘さんから茶碗を奪い取って、その底に残ったお茶を飲んだ。独特な苦味のある味が口に広がる。
 

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