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第1章 おかえり
碧棺左馬刻とはディビジョンラップバトルで
会う事になる。
その度に簓は俺と奴のあいだで複雑な気持ちに
耐えなければならない。
俺が…今の気持ち隠してたら
こうはならんかった。
俺に気を使うことなく、
碧棺左馬刻だけを想えていた。
「ごめんっ…」
「蘆笙…?」
背後から名前を呼ばれ、振り返る。
「さ、ささら…」
いつの間にかそんなに時間が経っていたのか。
風呂から上がった簓がそこにいた。
「蘆笙……それ」
俺の手元の写真を見て固まる。
「すっ、すまん、勝手に見るつもりじゃ…」
「なんでお前が謝んの…」
「え…」
「…謝らなあかんのは俺やろ…」
「簓…」
俺の手から写真を取って眺める。
「これ、左馬刻。
もうお前も分かってると思うけど、そういう仲やった。
お前と解散して、何もやる気のない時に出会ってな、
俺がお前の事を元相方やと思えるまでにしてくれた
んがコイツ
気づいたらお前によう似たコイツを好きになってた
…俺が悪うて、嫌われたやろし、解散なって、こっちに戻ってきたら
お前の面影で好きになっただけあって、今度は左馬刻の面影お前に重ねてもうて」
そう言いながら、乾いた笑を浮かべる。
「最低やな俺、お前忘れる為に左馬刻利用して、
左馬刻本気で好きになってもーて、
またお前に忘れさして貰おうなんか、そんな
都合のええ話ないよな」
「………」
「でもな、お前をもう一回好きになりたい
言うたんはほんまやねん
未練たらしすぎやな……ごめん」
そう言う簓の頬には、俺と同じで涙が伝っていた。
「簓…」
「ごめんな、俺!
今日は帰った方がいいよな!」
「簓っ!!」
慌てながら帰る支度をする簓の腕を掴んだ。
「…ろ、しょう…」