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第1章 おかえり
「……あー!!ろしょぉー!
やーっと見つけた!!」
先程の女生徒にも負けへん良く通る声。
見間違えるはずも、聞き間違えるはずも無い。
白膠木簓。
憧れ過ぎたが故、数年前、俺が別れを告げた男。
そして数日前にラップチームを組むことになった男が
今、俺の目の前に居た。
「……さっ、ささら!?っ」
「なんやなんや!
あがり症は学校でもなんかいっ!
ええ、ええ、それでこそ蘆笙や!」
周りの生徒たちは、俺と簓に面識があった事に
驚きを隠せないようでザワついている。
なんで……
言葉を紡ぎたいのに声が出ない。
喉まで来てるのに。
なんて話したら良いか分からへん。
なんでや。
あの時、チーム組む時は普通に話せたのに。
時間経ったら…なんで話せんくなるんや。
「……?
蘆笙……?どーしたん??
顔真っ赤やでおい
……あ、相変わらずお前俺のこと大好きか!」
「お前……っ、なんでっ…学校来てんねや!」
「あー!
感動の再会過ぎて忘れとったわ !」
「いや、数日前に会っとるやろが!」
また眩しい笑顔を俺に向ける。
ほんま、何も昔から変わっていない。
「あんな、俺お前に頼みがあんねん」
「頼み……?」
「おう!せや!
でもその前に……皆さん偉いすいまへん
ちょっとだけ昔の馴染みだけで話させてもろても
ええ?」
簓が声を掛けると、生徒たちは各々頷き、
教室へと戻って行く。
「蘆笙先生!
昔の知り合いなんやったらゆっくり話してなー!
私ら自習しとくし!
ほんならね!白膠木さん!最後に握手いい?」
「おお!かまへんかまへん!おおきになー!」
簓は女生徒と握手をし、その背中を見送った。