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美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜

第21章 ★本当の気持ち〜side翔〜



いつから君を一人の女の子として意識するようになったのか、それは自分でもわからない。

妹の友達。
俺にとって彼女は第二の妹のような存在だった。
……確かにそう思っていた。

でも、気が付けば好きになっていた。

今までの経験から、俺は誰と付き合ってもどうしても花音を優先してしまう。
これはこの先も一生変わらない。そう思う。

小さくて弱いくせにどこか無鉄砲で、その無邪気さが酷く不安なのだ。
変な男に騙されやしないか、危険な目に遭ってやいないか、いつも心配で目が離せない。

おまけに彼氏はあの響だ。

これでも一応、響の事は信用している。
あいつは絶対に花音を傷付けるような事はしない。

でも、響は少し……いや、だいぶ変なやつだから、やっぱり花音の事が心配で放っておく事はできない。

だから……
俺は自分の気持ちに蓋をした。

彼女を一番に優先してあげられないなら、自分から告白なんてするもんじゃない。
何より、失うのが怖かった。

大切にできずに失うぐらいなら、この気持ちは一生自分の胸に秘めておこう。
そう思っていたーー。

「……これ……ね、本命だから」
「え……? 」

目の前に差し出された綺麗に包装されたチョコを見つめ、思いもよらない突然の出来事に一瞬固まる。

「……俺は花音が一番に優先なんだ」

俺の口から、ポツリと無意識に小さく溢れた言葉。

それを聞いた彩奈は、悲しそうな顔をして小さく微笑むと、俺に向けて差し出した手を引っ込めた。

「うん……そっか。そうだよね、やっぱり迷惑だよね。ごめん、今のは忘れて」

ーーー!

立ち去ろうとする彩奈の手をグイッと掴むと、驚いた顔をする彩奈が俺を見上げる。

「いや……だから、そうじゃなくて……。俺は彩奈の事が好きなんだ。でも、やっぱり花音の事を優先してしまうと思う。だから……彩奈を悲しませて失いたくない」

彩奈の言動に触発され、俺は告げるはずではなかった胸の内を曝《さら》け出した。

すると、涙を浮かべた瞳でニッコリと微笑んだ彩奈。

「なんだ、そんな事……。何年一緒にいると思ってるの? 」

そう言って微笑んだ彩奈はとても綺麗で……。

まるで時間《とき》が止まったかのように、俺は彼女に見惚れてしまったんだーー。




ーー完ーー



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