
美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜
第1章 私の幼なじみはちょっと変
お兄ちゃんに首根っこを掴まれたまま、ズルズルと引きづられてゆくひぃくん。
「花音、また後でねー」
相変わらずニコニコと微笑むひぃくんは、ヒラヒラと手を振ると私の部屋から姿を消した。
私は大きく溜息を吐くと、閉じられた扉を見つめた。
あんなんでも、実はひぃくんは凄くモテる。
お兄ちゃんとは対照的な雰囲気だけど、同い年の二人はその人気を二分にして、昔からよく学校の女の子達から騒がれているのだ。
私だって……
何を隠そう、実は初恋はひぃくんだったりする。
まるで絵本の世界から出てきたような、王子様みたいにカッコイイひぃくん。
性格だって優しいし、一見すると申し分ない。
ただ、ひぃくんはちょっと変。
私がそれに気付いたのは小学四年の頃。
休み時間に廊下でクラスの男の子と話していると、突然やってきたひぃくんが男の子を殴った。
私の目の前で吹き飛ぶ男の子。
周りでは悲鳴が聞こえ、殴られた男の子は床に尻もちを着いて呆然とひぃくんを見上げる。
あっという間に騒ぎになった廊下に、誰が呼んだのか気付けば先生が駆けつけていた。
何で殴ったのかと問いただす先生に、ひぃくんは口を開くとこう言った。
「蚊が止まってました」
……そんな訳あるはずない。
今は二月だ。
その場にいた全員が思った。
