
美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜
第9章 君は変な王子様
暫く廊下で呼び込みを頑張った私は、背後にある扉から教室を覗いた。
店内は満員状態で、席が空くのを待っている人までいる。
これならもう大丈夫。
時間的な事も考えて、そろそろ教室内に戻ろうと扉に手を掛けた瞬間、後ろから肩をたたかれて呼び止められた。
「ここ今入れますか?」
その声に振り向くと、他校の制服を着た男の子が二人立っていた。
「あ、えっと……今混んでるみたいで……」
私が申し訳なさそうにそう言うと、目の前の男の子は優しく微笑んで口を開いた。
「じゃあ、空くまで待ちます。ウサギ可愛いですね」
「あっ……ありがとうございます」
ペコリと小さくお辞儀をすると、男の子は小さくクスリと笑って看板を指差す。
「ケーキ……お勧めって何ですか?」
「……モンブランが美味しいですよ。お家がケーキ屋さんの子がいて、本当にお店で売ってるケーキなんです」
ニッコリと笑顔でそう答えると、目の前の男の子の顔が急に赤くなりだした。
どうしたんだろう……?
「本当に可愛いですね……」
……え?
ケーキが……?
確かにモンブランの見た目は可愛い。
でも、まだ見てもいないのに。
変わった人だなぁ……。
目の前の男の子をジッと見つめる。
「あ、あの……そんなに見つめないで下さい」
「えっ?! ……あ、ごめんなさい」
私は慌てて男の子から視線を逸らすと、逸らした先で目に入ってきた人物に驚いた。
私の身体からは一気に血の気が引き、顔を引きつらせたままその場で固まる。
私の視線の先には、真っ青な顔をして身体をプルプルと震えさせ、廊下で立ち尽くしたまま私を見つめる……ひぃくんがいた。
