
美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜
第10章 君とハッピーバースディ
ーーー?!
……ちょっと苦しいかも。
「花音っ! 可愛いー!」
ギュウギュウと締め付けるひぃくん。
うっ……本当に苦しい。
苦しさに耐えきれずに身体を押してみても、ひぃくんは全く離れようとしてくれない。
「ひぃくっ……死ぬ……っ」
これは抱擁ではなく、プロレスか何かだろうか……。
苦しさに意識が遠のきそう。
お願い、ひぃくん離して……。
「ーー響、長すぎ」
そう言ってひぃくんを離してくれたお兄ちゃん。
助かった……。
「ひぃくん、苦しいよ。もっと優しくして」
「ごめんね、花音。優しくするからもう一回いいー?」
フニャッと笑って小首を傾げるひぃくん。
「ダメ」
そう言ってひぃくんの首根っこを掴んだお兄ちゃん。
首根っこを掴まれたひぃくんは、そのままズルズルと引きづられて席へと連れて行かれる。
「花音、始めるよ。早く座りな」
ひぃくんを座らせたお兄ちゃんは、未だ突っ立ったままの私に視線を移すと、そう言って優しく微笑んだ。
「……うんっ!」
笑顔でそう答えた私は、ニコニコと微笑みながら手招きをするひぃくんの元へ行くと、空いている隣の席へと座った。
私の目の前には優しく微笑むお兄ちゃん。
その隣には、ニッコリと微笑む彩奈がいる。
私は隣にいるひぃくんへ視線を移すと、ニコニコと微笑むひぃくんにニッコリと微笑んだ。
毎年変わらないお誕生日会だけど、だけどやっぱり今年は何かが違う。
……とっても幸せ。
テーブルの下でこっそりと繋がれた手にキュッと力を込めると、私は笑顔で口を開いた。
「皆ありがとう! 私今、凄く幸せっ! 大好きっ!」
私の言葉に優しく微笑んでくれるお兄ちゃんと彩奈。
「俺も大好きー!」
そう言って私に飛び付いて来るひぃくん。
慌てて私からひぃくんを引き離すお兄ちゃん。
そんないつもと変わらない光景に、私は小さくクスリと笑みを漏らす。
昔からいつも一緒だった私達。
まさか、ひぃくんと恋人同士になるなんて思ってもみなかった。
少し前までの自分に教えてあげたい。
……私は今こんなに幸せだよって。
お兄ちゃんとひぃくんが戯《じゃ》れているのを横目に、呆れた様な顏をして見ている彩奈。
私はそんな三人の姿を眺めながら、今日という日を四人で過ごせた事を、心から幸せに思って微笑んだーー。
