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風に吹かれて

第12章 5×20オーラス⑤

12月、オーラス。

私がLVで入ったシアターでは、立つ人と座ったままの人が半々ぐらい。
真ん中よりも前のお席だったので、後ろの人が見えにくくなることも考慮し、迷った末に結局立たずに参加した。

自分の心の投影なのかもしれないが、風っ子たちは込み上げる想いを抑えきれないように見えて。
大丈夫かな、と心配になるシーンもあった。

控えめな歓声をあげながら、どうしても20周年のツアーの終わりを意識してしまう。

来たくても来られなかったファンが沢山いる。
悲しむために来たんじゃない、と自分に言い聞かせた。



そんな中、お兄さんチームの堂々とした姿は圧巻で。
この二人がグループを引っ張って来たんだな、と改めて惚れ惚れと見つめた。



赤君の、生放送の司会やニュース番組、世界的な著名人とのインタビューで鍛え上げた生ものを扱う胆力。

彼の明晰な頭脳と、自らの思い描くオーラスを完璧に実現させようとする情熱が、強い力となってライブを進めて行く。
物凄く精密なコンピュータがフル稼働しているみたいだ。

恐らく、込み上げる想いで視界が曇ることを彼は自分に許さない。
会場の隅々までくっきりと鮮やかに、クリアに見えているんだろうな、と思った。



一方、私の大好きな青君は。
登場した時から最後の挨拶をするまで、私にはずっと。
ずっと、誇らしそうに見えた。

その落ち着きぶりに「泰然」とはこういうことを言うのか、と思いながら。
決して先頭に立って鼓舞するわけではないのに、明らかに全体を支えているのはこの人のブレない存在感だと解かる。

きっと彼らを全く知らない外国人がこの様子を見ても、彼がリーダーなんだと当たり前に理解するだろう。



日が経ってから腑に落ちた。
あれは多分、絵を完成させたときの表情なんじゃないのか。

途中、何度も迷いながら、くじけそうになりながら、時にはしばらく筆をおいてみたり、逆に何もかも忘れて没頭したり。

近付いて見て、離れて見て、バランスを考え技術を使って整え、降りて来たイメージをようやく形にする。

そうして完成した絵を眺めている時、あんな表情なんじゃないだろうか。



モノ作りが好きな人なら、きっと味わったことがあると思う。

精一杯やった。
やり切った。
これが自分にとっての最高の形。
付け加えるものは何一つない。

そういう顔だった。


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