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風に吹かれて

第16章 コロナ

新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が全国に拡大してから数日。
私が暮らす東北の田舎町でも、外出する人の姿が大幅に減って、商業施設の営業自粛や時短なども本格化し。
街の灯りが少なくなった。

私自身はインフラの仕事をしているので、通常勤務の日々を過ごしている。
出勤人数の調整もずっとされなくて、職種から言って仕方のないことだと半ば諦めていたけれど。
冒頭の宣言により、やっと会社も在宅勤務を取り入れることになった。

と言っても、公共性の高い職種ということで1割減がギリギリだそうだ。



出勤が減って困っている人、仕事自体がなくなってしまった人、逆に休みたくても休めない人、就活中の方、学生さん、学校に行けない子供、持病のある高齢者。
それぞれが、いろんな気持ちを抱えてこの時を耐えているわけで。

朝晩、通勤電車に揺られながら、怯えていては暮らしが成り立たないと思い、鈍感力も大事、と言い聞かせている。

同じ車両に乗り合わせた人や職場の同僚までをウイルスのキャリアじゃないのか、と疑ってしまったら。
何と言うか、もう自分が自分でいられなくなるような気がする。

エレベーターのボタン、ドアノブ、使いまわしているペン。
消毒液も除菌シートも手に入らない今、気にし出したらキリがない。
落ち着いて、自分が出来ることを地味にやるのみ。

感染者に直接接する職業の方のご苦労を想ったら、キーキー騒いでるのは、こう言っては言葉が悪いけれど、もう趣味と言うか、娯楽みたいなものかもしれない。



手を洗いながら5人の歌声を思い出す。
可愛かったなぁ~、とニヤニヤ出来るうちは、自分は大丈夫だと思う。

物凄く好きなものがあるって、幸せなことだ。
優しい気持ちを忘れないでいられるもの。



灯りの減った街並みに、東日本大震災の当時のことが思い出される。
通勤の際、駅を利用するたびに、電車が動いていることに感謝の気持ちが湧く。

電気、ガス、水道。
当たり前にあるものなんて一つもない。
全て人の手があって運営されている。

赤君が教えてくれたように、地震の後で電車が動き始めた時は、私も本当に嬉しかった。

関連する人々の頑張りで維持されているシステム。
皆さん、ご自身のご家族や生活のこと、沢山の心配事がおありだろうに、社会を支えてくださって感謝しかない。

5人にも、ありがとう。

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