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風に吹かれて

第18章 はぁって言うゲーム

以前一緒に働いていた女性で面白い人が居た。
年齢も近く仲良くしていただいて、二人でお酒を飲んだりもしたものだが、とにかく念力の強い人だった。

念力?
いや、何だろ、想う力?
創造力?

彼女を見ているといつも、自分の現実って自分で作っているんだなぁ、と感心したものだ。

例えば。
彼女いわく、自分がトイレの個室(自宅以外)に入ると9割以上の確率でペーパーが無いのだと。

はぁ…(呆然)。

って感じだが、一緒にトイレに行くと本当にいつも「また紙が無い!!」と怒っていた(笑)。

ストックはそれぞれの個室にあるのだから無くなったらセットすればいいのに!
世の中の人はみんな自分さえ良ければいいと思ってるんだ!!
次の人が困るって思わないのかな!?

律儀にブツブツ言うのが本当に毎回で。

「まぁまぁ、ラッキー貯金だよ
いつもありがとね」

適当なことを言いながら、私はいつも、笑いたいのを堪えるのが大変だった。

だってさ、自分はトイレに入ると紙が無い運命なの、ってニコリともしないで真剣に言うんだよ。

決して馬鹿にしてるわけじゃなくて、申し訳ないけど冷静に見ると非常にコミカルで、この人何言ってるんだろ、と思ったら笑ってしまいますよ。



彼女の信念はどちらかというと不運に見える現象を引き寄せることが多かったのだけど、全くベクトルが違うものもあって。
懸賞に当たる確率が異様に高いとも言っていた。

何でも、応募する段階で、これは絶対当たる!!という確信が沸き上がって来るそうで、そうすると当たるとのこと。
この確信が無いときは外れてしまうらしい。

はぁ~…(感心)。

って感じで、凄いなぁ、と驚いた。



ある時、彼女が、バスで自分の隣に座る人は必ず挙動不審でオカシイ人なんだ、と力説するのを聴きながら、つい何気なく「それはきっと自分で確かめてるんだろうねぇ」と言ってしまった。

はぁ?(なんで?)

キョトンとした彼女の可愛い顔を憶えている(笑)。

「懸賞に応募する時の感じで、
トイレのドアを開ける時に、絶対に紙がある!!
って念じてみ?」

そう言ったら、彼女はピンと来なかったらしく、はぁ…と考え込んでいた。

家庭の事情で転職してしまった彼女に、時々LINEを送る。

「また飲もうよ」と誘うと、いつも「会いたい」と返信してくれるけど、まだ実現していない。

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