
邪恋の爪痕と片恋の彼
第5章 残りカスの薫り
~真壁side~
「じゃぁ、これと…コレ――――…御船さんの所に持っていくから」
「あっ、俺も――――」
纏まった資料を展示企画課に届けると言う境井さんに着いていこうとすると「大丈夫」と、同行を阻止される。
「真壁は、駅前マンションのWeb広告急かされてなかったか?」
秋のハウジングギャラリーの件とは別に、マンションのWeb広告の依頼が急遽決まり――――…部長からせかされていた…。
予約が思ったよりあって…欲がでた上が――――大々的に“残りわずか!”と、言いたいらしい………
が、他の業者に調子に乗っていることを悟られたくなくてWeb広告だけにしたいと…我が儘を言ってきたのだ。
「しかも、オシャレな広告で…っておまけ付き……デザイナーも悩んでるんだろ?」
境井さんは資料を抱え、パソコンを指差し笑う。
「本当に――――…言えば願いが叶うなんて……どこのファンタジーワールドでしょうね?」
俺は、ゲッソリと言う仕草をする。
