❇️片暉の残照❇️
第9章 城下町と嫉妬の炎
「平民女が――――…王族と肩を並べて歩くなど!許させるはずはない!それに…片目しかない女など…気持ち悪くて…側にいられるだけで迷惑なはずだわ!
そう、そうよ!サンドラ様は――――困っているに違いないわ!」
嫉妬からインギルの思考は自分の都合のいい方向へと向かう――――。
赤毛の淑女は自分の従者を呼び出しニヤリと笑う。
「あの――――髪がサンドラ様を惑わしているに違いないの…。平民のくせして…黄金色の髪だなんて…身の程を知るがいいわ!」
従者はインギルに深々と頭を下げると――――サロンを出ていった。
それを見ていたサロンの店主は身の毛が逆立つほど…鳥肌を立てた。
貴族の醜い裏の顔を見たのだから――――。
「あんなのが…貴族様かよ…」
多額の報酬で…一時の間だけ貸しきりにしたことを店主は後悔したが――――…実質…逆らうことは出来ない状況だった。