
カトレアの咲く季節
第4章 収穫祭・朝
りるりると鳥が鳴き、石畳の足元に木漏れ日が揺れる。祭りの中心地である広場に着くと、アレクは我慢できずに走りだした。
「ユナ、ユナ、チーズパイ食べよう!」
「走らなくてもパイは逃げないわよ?」
「だって待ちきれないんだもん! 買ってくるから、ユナはベンチに座ってて?」
祭りに合わせて飾られた木のベンチにユナを誘導し、アレクは人だかりのする屋台へと駆けて行く。その後ろ姿を愛おしそうに見つめていたユナは、ふと胸を押さえた。
ちくり、と鈍い痛みが走ったように思ったのだ。
(まさか、気のせいだわ。もうずっと、何事もないんだもの)
澄んだ空気を胸一杯に吸い込み、静かに吐く。それだけで胸に感じた違和感はすっかりなくなっていた。
収穫祭が楽しみで心を躍らせすぎたのかしらと、ユナは可笑しく思う。
やがて、アレクが両手に抱えるほどの戦利品を持って自分へと向かってくるのが見えて、ユナは手伝おうとベンチを立った。
「ユナ、ユナ、チーズパイ食べよう!」
「走らなくてもパイは逃げないわよ?」
「だって待ちきれないんだもん! 買ってくるから、ユナはベンチに座ってて?」
祭りに合わせて飾られた木のベンチにユナを誘導し、アレクは人だかりのする屋台へと駆けて行く。その後ろ姿を愛おしそうに見つめていたユナは、ふと胸を押さえた。
ちくり、と鈍い痛みが走ったように思ったのだ。
(まさか、気のせいだわ。もうずっと、何事もないんだもの)
澄んだ空気を胸一杯に吸い込み、静かに吐く。それだけで胸に感じた違和感はすっかりなくなっていた。
収穫祭が楽しみで心を躍らせすぎたのかしらと、ユナは可笑しく思う。
やがて、アレクが両手に抱えるほどの戦利品を持って自分へと向かってくるのが見えて、ユナは手伝おうとベンチを立った。
