無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

　台風一過の朝、僕は動けなくなった。

　厳密にいうと、動く。手足なんて自由に動く。
　でも、数ミリでも頭を動かすと、自分ごと景色がグルグル回ってる感覚におそわれた。

　動くと気持ち悪すぎるから受診もしてないけど、回転性めまいだったんだと思う。
　半日くらい寝てたら、良くなった。

　でも、つぎに台風が過ぎたあとにも同じようにめまいがきた。

　閉鎖された狭いところも苦手になった。
　電車に乗って、ドアが閉まると、その圧迫感に動悸がはじまる。
　空気は充分あるのに、息苦しい。
　ドアをこじあけて、窓を割ってしてでも、ここから逃げださなきゃ…って思いにかられる。
　大丈夫、大丈夫って自分に言いきかせて、すごした。


　これまで、育てかたが悪いとか、やっぱりママがいないからとか言われたくなくて、けっこう必死だったと思う。

　その生活を変えた。
　ひとりでぶらりと出掛けたり、飲み会とか、マルとは関係のない遊び時間もつくった。

　いつしか症状は消えていった。
　過度のストレスって、いけないんだなーって思った。
　育児から離れた自分のための時間があることって、とても大切なんだなーって思った。

　そして、マルと遊ぶ時間が、前よりももっと楽しくなった。

※良性突発性頭位目眩症とパニック障害だったんじゃないかなーと思います。