不純異性交際(下) ―それぞれの未来―
第32章 たからもの
「アンナと平野、ほんと仲良いよね。いつも楽しそうだし」
「ちょっとお、くっつけようとしないでよ~?」
「しないけどさ(笑)でも本当に…お似合いなんだもん」
「…ないない。今とても恋愛する気なんて起きないもん。でもあいつイイ奴だし、楽しいから。それだけ」
「平野は何も言わないんだ?」
「言わないねえ。遊ぼうって声かけてくれるけど、帰りはキッチリ送ってくれるし。変な空気、一切ない!」
「へぇ…」
「ま、支えられてるのは事実だよ…ふふ」
「うん。私も平野に感謝しないと。アンナが元気になってよかった」
4人とも温泉を出ると、車の前でしばらくおしゃべりを楽しんだ。
「次は忘年会ですかねぇ~」
平野の言葉にアンナもノリノリだ。
やがてアンナは平野の車に乗り込み、私たちも家路についた。
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去年のクリスマスは、紗奈と過ごしたっけ。
今年はそこに奈美と、息子の恭ちゃんも加わった。
「恭ちゃんもいっちゃんも、大きくなったねぇ~!!」
親友の子供たちをかわるがわる抱き上げ、キョトンとした2人を見つめる。
「ミライ、本当に来てよかったの~?瀬川、寂しがってんじゃないの(笑)」
久しぶりに会う紗奈はバッサリとショートカットに髪を切り、すっかりお母さんの顔だ。
「ん、大丈夫!今日は平野と飲みに行くみたいよ(笑)」
抱いていた紗奈の息子”いっちゃん”をベビーベッドにおろすと、私もディナーの準備を手伝う。
「奈美、元気してた?あれからどうなの?旦那さんは」
私が声をかけると奈美は一瞬うつむく。
「あぁ、ソロキャンプね。まだ行ってるの?」
紗奈も言う。
「うん…でもまぁ、頻度は減ったかな?」
「だけど、クリスマスにも行っちゃうなんてねぇ。恭ちゃん、寂しいよね~え」
紗奈が恭ちゃんをあやすように言った。