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性に溺れる私

第3章 【先生への逆襲】






「じゃ、猪俣くんの傘に入れてもらおうかな」




「うん」




先生の視界にちゃんと入ってると思う。
何なら目の前でイチャついてあげようか?
ぞろぞろと下校していく生徒たちに混ざり溶け込んでいく。




先生の口が「藍沢…」と呼んじゃうんじゃないかとよぎるほどこっちを向いていて何か言いたげだった気がした。
だから咄嗟に猪俣くんの腕に絡ませた手。




「え、冷たい…!もっとこっち来ないと猪俣くんが濡れちゃうよ!?」




「わっ!ごめん…!」




ひとつの傘の中で見つめ合う眼と眼。
まるでキスしちゃうかのような距離感。
テンパって離れないように傘を持つ手にも手を重ねる。
私に差し出してばかりで肩濡れちゃってるから。




ハンカチ出して拭いてあげる。
至近距離で真っ赤な彼は本当、女の子に免疫ないんだね。
少し毛先の濡れた私が潤んだ瞳で見上げたらどうなっちゃうの…?




「アハハ、結局濡れちゃってるじゃん二人とも」




「本当だ…」




無理なく笑える等身大の彼に惹かれてるフリも簡単に演じれて楽しそうにじゃれ合いながら意識は斜め後ろに集中してる。
先生がどんな顔で私たちを見ているのか。
どんなふうにもがき苦しんでいるのかだけ。




だから猪俣くん。
無色透明な汚れなきキミは私なんかに捕まっちゃイケナイんだよ。
平気で踏み滲む一番悪い女なんだから。




「もうその藍沢さんってのやめない?」




「えっ!じゃあ……その猪俣くんってのも」




「何て呼べばいい?」




「えっ!えーと、えーと……」




「大樹くん……じゃダメ?」




「わわ、ハイ!それで…良いです」




「プハッ!リアクション面白過ぎ。私も玲奈で良いよ」




「れれれ玲奈っ!?」




「うん、まだ誰もそう呼んだことないから第一号に認定してあげる」




少しだけ歩いて顔を見合わせては赤くなるキミをからかっていた。
バシャバシャと誰かが走って来る足音……もう気付いてる。




時が止まってしまえばいいのに………




雨に濡れるなんて先生らしくないよ。
私を呼び止めてその後は…?
他の生徒だって見てるかも知れないのに…?
危険を顧みないほど追い込まれてるの…?









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