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3度目にして最愛

第1章 1度目は傷心

だがその幸せの歯車はセックスという肉体関係が生じた事で少しずつ狂い始めていった。
自分が処女だという点を差し引いても、水城が体験した初夜は激痛そのもので、受け入れたのは冷や汗をかく自分の為に休憩を挟み、律動が始まれば「お前が好きだ」と耳元で囁かれる男に嫌われたくない一心だったからだ。
抱かれた後、月2のデートの後に今後行われる事だろうセックスが憂鬱に思えてしまったが、慣れてくれば痛みより快楽が得られると聞くし、好きな相手なら我慢が出来る筈だと水城は信じた。

だが、通算5回目を迎えたセックスで得られたものは待ち望んだ快楽ではなく吐き気だった。
繋がって中を突かれる痛みに、もう作り笑いを浮かべる事も両目で男の顔を見る事も出来ずに、痛いと訴える代わりに、男の背中に引っ掻き傷を残していたが、重い口を開いて水城はついに「痛い」と叫んだ。
しかし返答が無かった。
おかしいと思い、自分の上に覆いかぶさっている男の顔を覗き込めば、今まさに絶頂を迎える間際といった所だ。後に激しいピストン運動と共に重なった荒い息遣いを発する口が徐に開き、「悪い、無理」と返ってきた。
空いた口が塞がらずにいると、装着していた0.03mmのゴムに生暖かさを感じたが、反対に水城の心は冷えていった。

「この気色悪い男は一体誰なんだろう。絵が好きでたわいもない話に相槌を打ってくれる優しくて温厚な男は、一体何処に消えたんだろう。」
漠然とそんな事を考えながら、ただ時間が過ぎ去るのを水城は待ち、やっと自分本位なセックスをした男のグロテスクな凶器が自分の胎内から出ていった。残ったのはこの男とは金輪際セックスはしたくないという強い拒否感だけだった。

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