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変態ですけど、何か?

第10章 レクイエム

あたしは毎日、脱け殻のように過ごしていた。

昼過ぎに起きて、パパが用意してくれた朝食を、リビングでテレビを観ながら食べる。

奥様向けのワイドショーや、昔の時代劇やドラマの再放送を、ソファーに寝転んで観て、眠くなったら眠る。

夕食を作る気力もなく、お腹が空いたらカップ麺を啜る。

それでも、今、こうして曲がりなりにも、生きていられるのは、玲子の専属運転手さんのお陰だった。

宮崎から帰ってきた翌々日、
あたしはまだ、玲子を思い出しては、涙にくれていた。

そんなときに現れたのが、あの運転手さんだった。
何度か送ってもらってたから、あたしの家は知っていた。

ただ、玲子の失踪後、彼も姿を消していたから、現れた時には少し驚いた。

「もし、迷惑でなければ、秋野玲子様のお通夜に来て、線香をあげてやってくれませんか。
あれだけの地位を築かれた方なのに、
死因が自殺だということで、
葬儀は、数人の親族だけで執り行うことになっております。

ですから、血縁関係のないあなた様にご参列頂く予定ではありませんでした。

けれども、秋野様はお亡くなりになるまで、
いつもの里帆さまの事を気にしておいででした。

失踪なさった時も、
里帆は大丈夫だろうか?
ちゃんと学校に行ってるかな?
きっと私の事を恨んでるだろうな?


ご自身のことだけで精一杯なのに、
口を開けば里帆さまのことばかりでした。
そういう秋野様の御遺志を尊重させて頂きたくて、
ご親族の方々に了解を頂き、お通夜でのご焼香をお願いに上がった次第です。

大変無礼なお願いとは、重々承知しておりますが、本日の夜、最期のお別れをしてやって頂けませんか」

あたしは、彼の話を号泣しながら聞いていた。

親族にすれば、レズのパートナーだった高校生の小娘の存在なんて、玲子の汚点にしか見えないであろう。

あたしは彼に感謝した。

恐らく親族に了解させるのに、きっと苦労してくれたに違いなかった。




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