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第2章 捨てた恋

「今年の新入社員は二人?今から朝礼で二人の紹介をするから。俺は主任の立花泰宏……」
「……ゲッ!!!」

 あ、思わず声が出ちゃった。慌てて手で口を押さえる。もちろん彼と同期の男は私を見た。彼は怪訝そうな顔をしている。そりゃそうだろう。突然自分に対して「ゲッ」なんて言われたのだから。
 でも、でもこんなのってない……

「名前は?」

 分からないの?いや、分からないか。最後に会ったのは八年前。私がまだ中学生で、田舎者丸出しだった頃だ。あれから変わったんだもん。この人に振り向いてほしかったからじゃない。ただ、見返したくて。見返すチャンスは今だ。

「……柴崎、唯香です」
「……柴崎……、え、柴崎、唯香?」
「はい」
「え?!唯香?!」
「お久しぶりです」

 ふわりと微笑む。彼……ヤスくんは、私を見て絶句している。そうだろう。綺麗になっただろう。あんな捨て方をして後悔するだろう。心の中でふふんと笑ってやる。

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