進入禁止
第2章 捨てた恋
その日の夜、家で一人で晩酌をしているとインターホンが鳴った。画面に映るのがよく知っている人、しかも今とっても責めたい人だったので私は肩を怒らせながらドアを開けた。
「おー、元気?」
「元気じゃない!知ってたでしょ、私が就職決まったところにヤスくんいるって!」
「ええ?!」
「ええ?!じゃないよ!知らないはずないじゃん弟なんだから!」
「まーまーそんな怒んな。で、どうだった?久しぶりの『ヤスくん』は」
「どうって……」
語尾が小さくなる。さっきまでの勢いは完全に失って、私は俯いてしまった。
この人は立花日向。私の幼馴染であり、ヤスくんの弟だ。ヤスくんは立花家の長男で、日向の他に響と美晴ちゃんという弟と妹がいる。私はずっとヤスくん以外の三人とは仲良くしてきた。地元に残っている美晴ちゃんには実家で引っ越しを手伝ってもらったし、日向と響にはこっちで引っ越しを手伝ってもらった。ただ、ヤスくんだけは徹底的に避けてきた。姿も見ないようにした。なのに……。
日向は全て見透かしたような腹の立つニコニコ笑顔で私を見下ろしている。そういえば今の会社受けてみたら?と勧めてきたのも日向だった気が……
「っ、ほんっと腹立つ!」
「痛っ!」
「ヨリちゃんに浮気されろ!捨てられろ!」
「ちょ、マジシャレにならないこと言うのやめて?!」
思いっきり足を踏みつけてやった。ヨリちゃんとは、日向の奥さんで私もお世話になっている。というか、会社帰りに幼馴染とはいえ女の子の家に寄ってヨリちゃんに怒られたりしないのだろうか。まぁ、日向やヨリちゃんにとって私は『女の子』のカテゴリーに入らないのだろうけど。……ああ、それは、ヤスくんも一緒か。
「おー、元気?」
「元気じゃない!知ってたでしょ、私が就職決まったところにヤスくんいるって!」
「ええ?!」
「ええ?!じゃないよ!知らないはずないじゃん弟なんだから!」
「まーまーそんな怒んな。で、どうだった?久しぶりの『ヤスくん』は」
「どうって……」
語尾が小さくなる。さっきまでの勢いは完全に失って、私は俯いてしまった。
この人は立花日向。私の幼馴染であり、ヤスくんの弟だ。ヤスくんは立花家の長男で、日向の他に響と美晴ちゃんという弟と妹がいる。私はずっとヤスくん以外の三人とは仲良くしてきた。地元に残っている美晴ちゃんには実家で引っ越しを手伝ってもらったし、日向と響にはこっちで引っ越しを手伝ってもらった。ただ、ヤスくんだけは徹底的に避けてきた。姿も見ないようにした。なのに……。
日向は全て見透かしたような腹の立つニコニコ笑顔で私を見下ろしている。そういえば今の会社受けてみたら?と勧めてきたのも日向だった気が……
「っ、ほんっと腹立つ!」
「痛っ!」
「ヨリちゃんに浮気されろ!捨てられろ!」
「ちょ、マジシャレにならないこと言うのやめて?!」
思いっきり足を踏みつけてやった。ヨリちゃんとは、日向の奥さんで私もお世話になっている。というか、会社帰りに幼馴染とはいえ女の子の家に寄ってヨリちゃんに怒られたりしないのだろうか。まぁ、日向やヨリちゃんにとって私は『女の子』のカテゴリーに入らないのだろうけど。……ああ、それは、ヤスくんも一緒か。