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無人島行ってみた話

第9章 奇跡は起きた

1時間ほどしてか、桂木さんが戻ってきた。

なぜか、ペットボトルの液体が3分の2ほど減っている。

「食えそうなもん無かったわ。蛇でもおったらなぁ……水もないし」

口から吐き出される軽いトイレ臭に顔を背け、「しょうがないっすね」とだけ返した。

とりあえず水は、砂浜に空けた穴の蒸溜水を頼るしかない。

食べ物は海でなんとかならんか?

すると桂木さんがある物を出した。

「そうそう、こんなん拾ってなぁ」

それは、水中メガネだった。

「えっ! どこにあったんすか?」

「上がって左に下りた浜に落ちてたわ」

ゴムバンドは切れて、メガネの表面には傷があったが、そんなんどうでもいい。

海に潜れる。

靴ヒモをほどいてメガネにくくり、頭の周りにグルッと巻いた。

僕の肺活量は、イリュージョンの水槽脱出をやった時、練習で家の風呂で頭から潜って、二分半ほど息を止めたことがある。

「海のもん、とってきますわ」

そう言ってトランクス1枚で潜ったが、なぜか尻が浮く。沖に浮くブイのように。

僕の場合、頭から潜ると尻が浮くらしい

だから、シンクロのように足からドリルのように潜る。

岩場に足がついて、首から上が出るというね。

潜ると、やっぱり魚がいるのよ。

しかし、そんなもん手掴みじゃ無理なんで、なるべく貝やカニ等を狙った。

タコでもいないかな……て、そんな都合よくいるはずもない。

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