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まこな★マギカ

第9章 第六章



時計の針は4時と40分を少しだけ超えた辺りを指していた。いよいよこの盛大なパーティーも大詰めに差し掛かる頃だ。先程までちらほら空いていた席も既にほとんど埋まっている。いつの間にか限りなく満卓に近い状態だった。それを物語るかのようにホールの盛り上がりもさらにヒートアップしていた。

いたる所に設置されたスピーカーからは、トランスの重低音がリズムに合わせて時折り身体に伝わってくる。その振動が足元にまで及ぶと少しだけふらついているのが分かった。それをこらえるようにして、足の裏で床の感触を確かめながらホールの中を歩いた。

27番テーブルは、DJブースを超えて、さらにその先の角にある30番テーブルよりも、少し手前の席だ――はたして、今、そのテーブルに座っているのは誰なのだろうか。「まこな」とキュウベーさんは言っていたのだけれども、それは、あの声の主なのだろうか。もし、そうなのだとしたら、あれは、喫茶店の前で起きた出来事は、現実に起きていた事になる――いやいや、たまたま名前が同じってだけで、その女があの声の主とは限らない。奇妙な偶然と偶然が重なっただけなのかもしれない。むしろ、その可能性の方が現実的に考えてありえるのだ――でも、そうは言っても、その女と会うのは今日が初めてと言う事に変わりはない。いったい、まこなとは誰なのだろうか。どんな女なのだろうか。

気が付くと、DJブースが目の前にあった。普段は使われていないのだけれども、あらゆる角度からライトアップされているそれは、存在感が抜群に高かった。そして、そのブースには一人のホストの姿があった。そのホストはDJの真似をして、耳にメガホンを当てながらレコードを回す仕草をしている。それを見て周りの客やホストが笑いの声と煽りの声を上げていた。

その光景を見ながらさらにホールを歩いた。いくつかの客席を通り過ぎて27番テーブルが視界に入って来たその時、俺は自分の両目を疑わずにはいられなかった。なぜなら、そのテーブルの白いソファーの上には一人の女子高生が座っていたからだ。

じぇじぇじぇじぇ――JKじゃねーかよ!!
と思わず声に出してしまいそうなのを必死でこらえてその場に立ち尽くす俺――いやいや、いくらなんでも、JKがこの店に来たらあかんやろ……とさらに思う。身体は化石のように固まってピクリとも動く気がしなかった。


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