
仔犬のすてっぷ
第1章 プロローグ
「…ちぇっ!ついてないや……」
遅番の仕事を終えた、深夜2時過ぎ。
アパートへ帰る途中、雨に降られた。
(うわあ…本降りになってきたぁ!)
さっき立ち寄ったコンビニへ戻って傘を買おうか?…とも考えたけど、残念ながらここまで来たら、アパートの方がはるかに近い。
「こりゃあ…びしょ濡れ確定だぁ〜」
そう呟いて、アパートの前まで走って来たその時・・・。
「……ん?」
アパートへつながる階段の脇。
そこに、人らしいものが横たわって進路を塞いでいた。
(え?ええっ?!…し、死体……とかじゃ、無いよ…ね?)
一瞬、躊躇したけど、放っておく訳にもいかず・・・
駆け寄って、から、恐る恐る確かめてみる。
(…高校生?)
白いカッターシャツだかワイシャツだかを着て、リボンタイプのネクタイに、黒のスラックスに、革靴。
これだけの強い雨に打たれても、起きる気配は無い。
(……ケガ、してる…)
なかなか整った顔立ちをした彼は、頬に殴られたような痕があった。
(……これが死因…じゃないよ、ね?)
彼が死んでいるなら、警察を呼ばないと・・・そう思った時だった。
「ぅ…ん……」
あ、声を出した。
どうやら死人では無いようで……一安心だ。
(血が出てる…とかの感じも無い……)
彼の倒れている場所の周りにはそんな物はなく、彼の体を起こしても、ワイシャツが血で赤くなっている……なんて事も無かった。
(このまま、って訳にもいかないか……)
幸い、僕の部屋は一階の、1番手前にある。そこまで運ぶならなんとかなりそうだ。
「うっ…見た目より、重い……」
両腕で担ぎ上げると、結構しんどい。
とりあえず、僕は彼を自分の部屋へ連れ帰った。
