
仔犬のすてっぷ
第21章 奈落の裏では
スマホ中には、バニーな浴衣姿の優希の、満面の笑みが写し出されていた。
それは奈緒が酒の飲み過ぎで具合が悪くなって席を立った際に、その友人質を落ち着かせるために見せたものと同じ物だった。
「君が彼らに寄り添っていた時、お客様から少しだけ君のスマホを借りて、データのコピーをもらいました。
大丈夫、他のデータには一切触れていません。
優希君の可愛い寝顔とかも見てませんから☆」
「かっ…かりいいいぃむぅっ!テメェっ!」
「なんだ?そんなデータもあったのか。それもエサに使え………」
「むぅおりいりいいぃん!」
「……だから、今頃はウチの店には目撃情報が山程送られてきてる。
あとはウチの優秀なスタッフ(安田、石野)から送られて来る厳選された情報と、カリームんとこのラシードからの追跡情報を照らし合わせれば・・・」
「……ビンゴです。場所の特定、相手の予想配置と人数・・・ソレから要注意人物の特定も終わりました。
後はラシードが数人でポイントに張り付いて様子を見てくれています」
「・・・・・ぱちんこやって……なんなんだ?」
ぽけっ…と口を開けて呆ける蒼空の肩をぽん☆と叩くと、森川店長はカリームのタブレットを覗き込んだ。
「…なるほど。そりゃあ、蒼空が負ける訳だ。
奴さん……相当気合い入れて雇いやがったな。
厄介な奴が相手だ・・・」
「……!知ってるやつなのか?!」
我に帰った蒼空も、カリームのタブレットを覗き込んだ。そこにはあの時のおっさんが映し出されている。
「トーマス・村田……それがあいつの名前か」
「トーマス・村田…今は村田って名乗ってんのか……じゃあ、相方は今はサラ・村田ってのかな?」
「……なんで知ってる?あのトーマスってやつは・・・」
「シティー・ハンターってのはお前も知ってるな?」
「あ、ああ。アニメや漫画の……」
「あれは作り話だが、あれと同じ事をして生計を立ててる奴らは日本に実在する。コイツはその筋じゃ名のしれた有名人だ」
いわゆるバウンティハンター……
またはスイーパーと呼ばれる人種達。
ーー 物語にはちょくちょく登場し、物語を盛り上げる為の悪役として都合よく登場する事の多い連中である。
