
仔犬のすてっぷ
第22章 Played Fight a Waltz Steps
アキラが妙な事に勝手に納得している最中、サラが動いた。
「……!はや…」
サラの左ジャブが2発。辛うじて右の手甲でガードしたが、3発目の右ミドルキックはガードする時の彼のクセでたまたまそこの位置にあった左腕のガードプロテクターに当たった。
威力は半減されたものの、力の入っていない左の腕がそのまま自分の身体に当たり、アキラの体は右側へ流されてしまった。
「ーーの、野郎っ!」
背中を見せたサラに向かって飛び込むように間合いを詰めた蒼空が左ジャブを放つが、それが判っていたかのように彼女はクルリと体をひねってそれを避け、同じタイミングで左の裏拳を繰り出した。
「うおっ?!と……あ?!」
ーー ガスッ!
裏拳を避けた蒼空だったが、足元までは気が回らず、その後からすぐに繰り出されたローキックを喰らってしまった。
「ちぃっ!」
脚のプロテクターに当たり、ダメージはあまり無いが足元が掬われる形になった蒼空はたたらを踏むようによろけてしまう。
そんな相手を彼女は見逃さない。
蒼空が態勢を立て直す…その間に彼女の体がふわりと浮かんだ。
「…っ!やべ……」
鋭い右回し蹴りが風を切り裂き、蒼空の後頭部を直撃する・・・・・
ーーー ヒュオゥオアァーー…ッ!
シュルルッ……ガシュッ!
黒い筋が風切り音と共に飛んできて、蒼空の頭に当たる寸前のサラの右足に絡みついた。
「…!なんや?……くっ!」
そのまま空中で引っ張られ、バランスを崩したサラは尻から落ち、地面に叩きつけられる。
「あ゛〜〜〜っ!!いっつ〜〜…っ!」
しこたまお尻をぶつけたサラが、半分転がりながらぶつけた場所を擦って悶えた。
「あ〜、ワリィワリぃ!邪魔しちゃった、かなあ?」
シュルシュルッ……と黒い筋が音を立てながら持ち主の元へ戻り、一本の棒の形に姿を戻した。
「モリリン店長……いや、ディオ森川……」
茶髪三編みで革ジャン姿の青年は、にかっと白い歯を見せてから、蒼空にびしっ!と指を指した。
「アキラ、蒼空。二人共ミステイク!だぜ?」
