
仔犬のすてっぷ
第28章 仔犬達の・・・
「……今、そいつが考えてる事、分かるか?」
トーマスが指をさす方には蒼空がいて。
……つまり、今、蒼空が何を考えてるか?って事?
言われるまま、僕は蒼空の顔を見る。
人の考えてる事……そんなもの、解る訳が……
目と目が合った途端、蒼空が鼻の下を伸ばして僕の腰から下辺りに、視線を移した。
「・・・いや、解ります。彼はスケベな想像して頭の中はお花畑状態です、ねっ!」
とりあえず足元に転がっていたコーヒーの空き缶を拾って蒼空に投げ付けながら答えた。
「…でも、こんなのはただ単に彼の顔に書いてある事を言ってるだけで…誰だって今のあの顔見たら分かります!」
油断していた蒼空の頭に空き缶がクリーンヒットして かいぃん! と軽い音を立てた。
「……じゃあ、嬢ちゃん。ジャンケンしよう。嬢ちゃんが勝ったらそこにあるスマホをすぐに返す。ただし負けたら嬢ちゃんのそのバスタオルをもらう。……どうだ?」
「あの〜…それになんの意味が……」
「俺の動きを“力で”読み切っていたのなら、俺が何を出すのか解るだろ?
危機感が(力の発動に)必要かもしれないから、賭けをしてみている訳だ」
「なるほど☆じゃあ、俺はオッサンを心の底から応援し…」
「んなもん、応援するなあ〜!」
僕は素早くそこに転がっていた一斗缶を引っ掴み、馬鹿な蒼空に投げつけた。
ーーー くわわあぁん!
真顔でオッサンを心から応援しようとしていた蒼空の頭に、僕が投げた一斗缶は見事に当たり、独特の軽くて響く音を立てた。
「・・・なあ?オマエ……さっきから嬢ちゃんの攻撃が当たりまくってるんだが…避けねえのか?」
不思議そうな顔で言うトーマスに、首の角度がおかしくなったまま、蒼空が真顔で答えた。
「……いや…僅かに当たらない位置へ体も頭もズラして避けてる筈なんだけども……(汗)」
「何言ってるのさ…自分から当たりに行ってるようにしか見えないっての!」
缶は兎も角、一斗缶はわずかに左に逸れるコースへ誤っで投げ飛ばしてしまったはずなのに、蒼空はその位置へ頭を動かして……
・・・あれ?なんで??
いま、蒼空は『避けたのに』って言ったよね?
