
仔犬のすてっぷ
第31章 激突する、LOVE IT
「………う…」
「やぁ…目が覚めましたか?」
フルパワーで暴れ、体中がボロボロになって気を失っていたアキラが目を覚ました。
……僕はそのシーンは見ていないから詳しいことは分からないけど、もし戦えるのなら戦力になりそうな頼もしい人が復活したことになる。
…直ぐ側に居たカリームがアキラの体をゆっくり起こし、笑顔で話しかける。
「カリームか…あれから、どうなったんだ?姫二人は救出出来たのかい?」
・・・彼は…一度目が覚めた時、僕のアソコを、ちら見して興奮で回線が切れたのか、倒れてしまったんだけど……それは覚えていないんだろうか?
「そっちは何とか蒼空君の活躍で一段落つきました。でも、今は状況的に言えば先程より悪化しています」
そう説明しながらカリームが見る方向をアキラも見つめる。
その先には……
「………先程はよくもこの私を縛りつけてくれましたね。その御礼をさせて頂きましょうか?」
「いや、礼には及ばんよ。だから忘れてしまって次に行っていいぜ?」
霧夜とトーマスが睨み合いながら空気をピリピリさせているところだった。
「フッ……相変わらず食えない方だ。飄々としているのに闘気を漲らせて警戒を怠らない」
「そりゃどうも。俺は一番の依頼を果たすために “ここ” に来ているんでな。
お前さんを捕まえる気があるのがバレてんだから今更隠す気は無いし、あそこの嬢ちゃんもお前から護ることが出来りゃあ文句は無ぇ」
「なるほど…では、貴方には……
両方とも出来なくなって悔しがるところを私に見せてもらわないと…私の腹の虫は収まらない、ということですね?」
ズッ…グワワワアアァッ!!
………こんな陳腐な表現では伝えきれないほどの
“圧力”
が二人の間から激しく放出された。
「…ちっ!
コイツは…やべえ。優希っ!少し離れるぞ、ここはマズい!」
蒼空は素早く僕の手を握ると、幸お姉ちゃんの方へ向かってダッシュした。
