
仔犬のすてっぷ
第34章 事件が終って・・・
わざと有耶無耶にしたものの、それで事が追求される事はなく……。
その後は3人仲良く朝食を摂り、のんびりテレビを見て……。
「・・・暇だな」
ポツリと蒼空が呟くと
「・・・暇よねぇ」
奈緒ちゃんもポツリと返す。
テレビの中でワイドショーが特別面白くもない話題で盛り上がって爆笑する様子が流れる中、僕らの間では何もない時間が流れていた。
好きなだけ宿泊しても良いと、いわれているものの……同じ敷地内にある商業施設が始まるのはもう少し後で…普通温泉に来たならもうひとっ風呂浴びるっていう選択肢もあるんだけど、誰もそんな気持ちにならなかったようで。
「・・・・・帰ろっか…」
僕がそう呟いた途端
二人がそそくさと動き出した。
「……あれ?いいの?のんびり出来るチャンスなのに」
こうなる事は予想していたものの…一応、改めて聞いてみると
蒼空は
「なんか違うんだよ。これは」
奈緒ちゃんも
「そうよ…こんなの、違うよ。私、こんなのを望んでいるわけじゃ無いし」
僕としては上げ膳据え膳んで楽が出来て良いんだけど…でも、なんか居心地が良くないっていうか……。
こんな高級な部屋の中にいて、落ち着けない。
・・・小市民なんだなあ…って、心底そう思った瞬間でもあった。
それは、きっとこの二人も同じなんだろう。
あっという間に帰り支度が終わって、出ていく準備だ整ったところで部屋の中の電話機がけたたましく鳴り響いた。
『・・・もうお帰りですか?もう少しゆっくりされても当方は構わないのですが……』
これも落ち着かない理由のひとつだ。
僕らはまだ、フロントに連絡を入れちゃあいないのに、こうしてラシードさんから連絡が来るって事……。
なんか、見られているような…監視されているような…変な圧迫感があったからというのも事実で。
