
仔犬のすてっぷ
第36章 36章 これから先は・・・
店に着くと、そこは物々しくパトカーがたくさん停まっていて、怖そうな刑事さん達がわらわらと僕らを取り囲んできた・・・。
・・・・・なんてコトにはなっていなかった。
店の前には
本日、遊技台のメンテナンスのためお休みさせていただきます。
という立て看板が立っていて、後は清掃車両が一台と、清掃業者のワンボックスワゴンが二台、そして、ちょっとだけ高級な部類に入るセダンが三台停まっているだけだった。
そして、お店の中にはテレビドラマから飛び出してきたかのような厳つい顔をした刑事さんはあまり見受けられず……。
「すみませんが、こちらでお話を聞かせていただけませんか?」
・・・と、事務所のお姉さんのような女性刑事が二人、僕と蒼空の前でにこやかな対応をしているのだった。
「イメージと、違う…(汗)」
「あ、そっか。優希はこういうの、初めてなんだっけ?」
ケロッとした顔で蒼空が僕の顔を見て、ニッコリ笑う。
「言ったろ?俺達はなんにも悪いことをしちゃあいないんだ。怖そうな刑事さんは悪いことをしていそうな人間にしか用は無いんだよ。
……あんな風にな」
事務所の方から笑い声が聞こえてきているけれど、その入口に二人厳ついオジサマ達が門番よろしく陣取っているのがここからでも見えていた。
多分、中で話しているのは森川店長だ。
流石…というかなんというか……極悪なゴト師やみかじめ料を要求してくるヤクザな方々とも笑いながら話が出来る彼の力量たるや…。
相手を怒らせること無く納得させて退散させると言われている “森川マジック”
店長のトーク力は半端じゃなかったようだ。
結局、僕達が聞かれたのはどんな被害にあったのか、で。
なにかお咎めがあるわけでもなく、昼前には事情聴取は済んでしまったのだった……。
僕は少しだけ。
エンケンさんのような顔をした刑事さんと話が出来るかな?って期待してたのになぁ〜・・・。
