
仔犬のすてっぷ
第36章 36章 これから先は・・・
「少し失礼する」
警官数人を引き連れた、エンケンさんほどではないにしろ渋目のカッコいいおじさんが店内に慌ただしく入り込んでくるなり警察手帳をこちらに掲げながら
「この店の責任者を出してくれ。非常事態なんだ」
と言いながら店内をぐるりと見回した。
「店長なら昼からの出勤なんで現時点の責任者は我々になりますが……」
石橋主任と助野主任の二人が騒ぎを感じ取り、事務所からすぐに駆けつけると刑事さん達の正面に立つ。
普段はおちゃらけ気味のこの二人だけど、さすがは主任をやっているだけあって対応が早かった。
「我々がこんな形でお騒がせする理由はお察しかと思いますが……件の犯人が、脱走しました」
ざわっ…
開店前の静かな店内だから、大きめの刑事さんの声は聞き耳を立てることも必要ないくらいはっきり聞き取れた。
僕と蒼空以外の店員たちの顔に同様の色が混ざる。
「優希を襲った犯人が逃げた…?」
「あの…変態だって言う噂のやつが?」
「優希の操を奪おうとした変態野郎だろ?」
「今度は俺たちがひっ捕まえて株を上げるチャンスってわけか…」
「・・・お前ら、ちょっと黙ってろ」
凶悪犯が逃げたっていうのに反応のずれ方がお約束だったから(苦笑)かもしれないが、助野主任が頭を手で抑えながらひとつため息を付いた後呟くように指示を出した。
「御存知の通り犯人の霧矢はとても凶暴です。捕まったときからずっと名前を口にしていたそちらのお二人が狙われる可能性が十分にあります。
ですのでお二人は我々警察が匿うという結論が出ましたのでお迎えに上がりました」
僕と蒼空はお互いに顔を合わせて目をパチクリさせた。
「これは…トーマスのおっさんの予測していた事態だな…」
「うん…そうなると、次にここに現れる人物も決まっているっていうことだね…」
トーマスさんが希望しているのは霧矢が脱走すること。そして、そのドサクサに乗じて彼を確保し、自分達の世界へ連れて帰ること、だ。
だから・・・
