
仔犬のすてっぷ
第36章 36章 これから先は・・・
コールの相手は、森川店長だった。
パトカーに護送されている僕を気遣って電話してきたのだろうか?
そう思って電話に出ると・・・
「優希。こちらのことは俺に任せておけばいい。お前は相棒と一緒に、やるべきことをやって来い!
俺達は、お前達の帰りを待っているぞ」
・・・・・え?!
ななに?この、全部わかってるみたいな口調。
もしかして、トーマスさんてば全部この人にすでにこの件を話しちゃってる…?
「・・・どーした?」
「トーマスさん…この件について店長に…」
「ん?俺はなんにも話しちゃいないぜ?なんだ?店長さんからなのか?」
・・・あの人は、確かに時々先読みしているかのような発言をする人だったけど…
こんな、タイムリーなことって、ある?!
「言っておくが、俺は何も聞いちゃいないしお前達がどんな事に遭遇するのかは分からない。だが、この先は恐らく俺の手の届かないところでの出来事が待っているだろうことはおおよそ想像はつく。
だから、同じ職場の上司として、そして親御さんからお前を預かっている責任者として、もうひとりの親としての発言だと思ってくれればいい。
俺達のことは気にするな。お前達は、お前達の道を進め。そして、全てが片付いたら俺たちのところへ帰ってこい!」
・・・店長…。
やっぱ、あの人は凄いや…。
「・・・あのおっさん…やっぱ、只者じゃねえな…」
直ぐ側で座っている蒼空にもしっかり電話の内容は聞こえている。
「・・・そうだね。あの人は僕のひとつの目標だったし…今でも尊敬してるよ。あんな大人になってみたい」
「い、いや…あそこまで凄えのにはならなくていいからさ・・・」
そう言うと、蒼空は僕の顎に手をそっと添えてきた。
「…俺は、お前についていく。
どんなところでも、どんな場所でも、場面でも、俺はお前を守り抜く。絶対に、だ」
それだけ一方的に言うと、蒼空は僕に熱い接吻をしてきたのだった。
・・・・・。
そして、僕たちは・・・。
この世界から、消えた・・・。
