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絶対的下僕の末路

第6章 【Another story】






「はい!しません」




「じゃあね、おやすみ」




言うだけ言ってさっさと切る。
それも女王様ならではと思ってくれたら本望だけど、ちょっと本当に具合悪い。
寝不足だな、こりゃ。




学会も難なく終わり、関係者に挨拶した後は軽い昼食を取って解散となった。




「この後予定ありますか?少しの時間でも良いのでご一緒したいのですが…」




同業者から何度目かのお声掛けを頂いて全て丁重にお断りする。




「主人が待ってますので失礼します」




最近の断り文句は一律でこう言うようにしている。
一発で引いてくれるから。




ほんの一日離れてただけなのに不思議ね。
新婚でもないのにもう顔が見たくて仕方なくなってる。
あれだけベッタリな毎日だったはずなのに、離れたら恋しくなるの。




新幹線を乗り継ぎ帰った来た場所。
こんな早い時間だとは知らせてない。
まだ仕事してるでしょ。
サプライズ……なんちゃって。




受診時間を終えて頃合いを見て潜入開始。
顔見知りの医師や受け付けの子たちには伊織に知らせないようジェスチャーして帰ってもらった。




集中してパソコンとにらめっこしている背中がいつになく格好良い。
この前の逆パターンいっちゃう?




そっと後ろからハグしたら思いの外びっくりされて凄い目で見られた。




「わっ!あっ、沙羅ちゃん!?え、何で!?迎えに行ったのに!」




「早く会いたくて帰って来ちゃった」




「え、え、皆さん帰った?」




「うん、二人きりだよ」




「ん〜僕も会いたかった〜」




誰も居ないと分かればお腹に顔をスリスリして抱きついてくる伊織の髪を撫でた。




「お疲れ様、伊織」




「沙羅ちゃんもお疲れ様」




伊織は座ったまま、私はその横に立ってキスをする。
いつもなら二人きりだったら濃厚に絡んでいたかも知れない。
すぐに離れた私はパソコン画面を見て終わったのかを聞いた。




「沙羅ちゃん、何かあった?」




「え、ううん……何も」




ドキッとした。
ほんの些細な変化も気付いちゃう伊織に流石と言うべきか尊敬する。
私の表情をよく見てくれてるんだなって、日に日に嘘つけなくなってきてるけど。








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