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人身供物の村娘

第5章 恐怖の後の朝

次の日、菊理が起きると黒狐の姿が見当たらなかった。
「黒狐様・・・?」
あたりを見回しても、黒狐の姿はなかった。
もしや、昨日の件で見限られてしまったのでは…そう思うと菊理は胸が苦しくなっていた。
「黒狐様!どちらにいらっしゃるのですか?
菊理はもう森へは入りません!だからお姿を見せてください!」

涙目になりながらあたりを探すと、土間の向こうから黒狐が果物をもって菊理のもとに来た。

「どうした?そんな泣きそうな顔をして」
そういう怪訝そうにする黒狐を見た途端、菊理は耐えていたものがあふれたかのように泣き出してしまった。

「お、おい!どうした?」
珍しく焦る黒狐に、しゃくりあげながらいなかったからとうとう自分を見限ったのかと思ったと伝えた。

「すまなかった…少しでも良くなるかと思ってお前の村に
化けて果物を見繕いに行っていたんだ。」
そういって、渡されたのは郷里の名産の果物だった。
思い出していたのは、家族のことで
余計涙が出てきてしまった。

「菊理…少し話がある。」
そういわれて、通されたのは菊理が入ってはいけないといわれていた黒狐の自室だった。
いつも菊理と過ごしていたのは菊理の自室か、居間で
いつも、菊理は黒狐の部屋が気になると言っていた。

そこで、黒狐は部屋に通した理由を話し始めた。
昔は、奉納の代わりに調度品たちをもらっていたが、それさえすれば助かると思って変わらなかった。
だから人柱という形をとり始めていた。
だから、娘たちには罪はないと
記憶を消して元に戻していたのだそうだ。

「だが、おぬしは違った。
初めて会った時も、そのあとも
いつもどこかあきらめてここに来ているようだった。」

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