双龍の嫁
第3章 茶話会
半ば開き直ったのでしょうか。 そんな彼女のかん高い声を背後に聞きつつ二歩ほど歩き出したところで、わたしは水龍を見上げて小声で彼に話しかけます。
「あ、あの。 水龍……」
「ん?」
「このまま放っておけない。 あのまま彼らの不和が続くとことわりを外れて……しまいに村の土地が干上がってしまいます」
そう訴えるわたしの様子がよほど不安げにみえたのかどうかは分かりませんが、夫は歩をゆるめてようやく話に耳をかたむけてくれました。
「お前がそう言うのなら。 少しばかり風龍からも聞いていたが、ん……彼らはずっと上手くいってないのかな?」
「え、ええおそらく。 まだ和合も結んでいない様子で。 聞いたところ、花嫁が火龍を嫌って…というより、どこか苦手意識を持っていそうな……」
「苦手?」
「彼……火龍が粗暴なのだと。 大きくて、いかにも男性らしいから? わたしには……よく分からないですけど」
「ふうん。 火龍はああ見えて、繊細なところがあるのだけどね。 花嫁に無理強いしないのも彼の優しさだよ」
それもそうかもしれないと頷くわたしたちのもとへ、璃胡が駆けて追いついてきました。
少し遅れてそれを追う、火の龍も。
「ねえ、待ってったら!」
「璃胡!! これ以上水龍に馬鹿なことを言うんじゃない」
食い下がってくる璃胡にわたしはなんだか違和感を感じました。
水龍に一目で惹かれただけにしては、その声や表情に悲壮ともいえる様子が垣間みえたからです。
「沙耶お姉さま。 普通なら、わたくしはこんな失礼なことはお願いしないわ。 でも、貴女の夫は二人でしょう? どちらかを交換というのは、悪い話ではないと思うわ」
「失礼なのは、貴女の夫である火龍に対してでしょうに」