双龍の嫁
第3章 茶話会
話のあいだをややゆるい口調で繋いだのは、面倒ごとを避けてもうとっくに茶屋の出口から逃げたと思っていた潤香でした。
茶話会ではのんびりとした彼女しかみていませんでしたが、璃胡の前で静かにたたずむ彼女からは、明らかに怒りを含んだ空気が感じとれます。
「龍とはいえ……いいえ。 誇り高い彼らに対して、いくらまだ子供気分が抜けてないからといって、許される言ではないわよねえ」
そんな土の嫁にひるみ、ほんの少し璃胡の語気が弱まりました。
「潤香お姉さま。 わたくしはそれ程間違ったことは言っていないわ。 最終的にまるくおさまればいいのだし。 ひ、火龍だって……」
「だから一度結んだ婚姻を反故にすると─────? 貴女たしか、家柄は良いけれど親族が多すぎてご両親が長老に、ぜひ龍の花嫁にと頼みこんだのよね。 じつは一つ歳下なのを隠してまで。 おかげで貴女の実家は村からの寄付を得て今、裕福に暮らせている。 その恩を忘れて?」
わたしは璃胡のそんないきさつを初めて知りました。
あわせて抑揚のない口調で淡々と話す彼女に、口をはさめる隙がありません。
おそらくわたしたち花嫁三人の中で、もっとも恐ろしいのはじつは潤香なのでしょう。
火龍でさえも、先ほどから口を開きかけてはそれを閉じ、会話に入る機会をのがしています。
みなの気持ちを考えると璃胡の軽率な言動に対する彼女の怒りは正当なのかもしれません。
────けれど、元はこれは夫婦の問題のはずです。
ここまで自分の花嫁に足蹴に扱われている、火龍自身の気持ちはどうなのでしょうか。
わたしは火の夫婦を交互にみながらおずおずと言いました。
「璃胡さん、そのように選ぶ権利は貴女にはないのでは? だって火龍は最初から、花嫁を共有することを断っていたもの。 ……火龍、貴方は璃胡さんのことがお嫌いなのですか?」
「お、俺か……?」