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蜜と獄 〜甘く壊して〜

第2章 【快楽主義の射精術】








入店したての頃。
面接がてら個室に入って他のキャストの接客ぶりを見せてもらった事がある。
3〜4人見て回る途中、手コキについて事細かく説明してくれたのが堤さんだった。




どこが気持ち良いとか悪い接客例とかマナー違反な客への対応だとか一人でベラベラ喋っていた記憶がある。




「いいか、スミレはなツンツンしてるのが客ウケ良いんだ、でもこいつは陰でめちゃめちゃ努力してる、客ノートなんかつけてやがんだ、一人ひとりちゃんと真摯に向き合えば必ず次も来てくれる、そうやって指名に繋がるんだ」




誰も聞いていないのに目をキラキラ輝かせてマジックミラー越しに紹介する堤さんの横顔が印象的だった。
普通に皆、抱いてるんじゃないかとさえ疑ってしまうほどキャストへの執着愛が度を越えていたように思う。




客ノートねぇ……ひと昔前のような気がする。




「頑張れるか?最初はマニュアル通りで良いから」




マニュアル通り………今一番嫌いな言葉だ。




「顔出しNG、素性は一切明かさない…でNo.1取れた人って居るんですか?」




「世の中には五万と居るぜ、でもこの店ではまだ居ないかな」




「じゃ、そこを目標とします」




「お、強気で良いんじゃね?嫌いじゃないよ、そのガッツ」




「そこに行かなきゃ見れないんですよね?てっぺんでしか見れない景色…でしたっけ?」




「お、おう……覚えててくれたんだ?」




「え、嘘だったんですか?」




「いや、嘘じゃない!」




「良かった……私も見たいです、そこからの景色……頑張ります、宜しくお願いします」




そんな会話をしたと思う。
妙にどっしり構えてて顔とは似合わぬ発言をする。
若いのに達観してるって驚いたみたい。
新人だから一目置いてくれていると思ってた。




初めてのお客様についた時も、マジックミラー越しに見られていると意識しながら大胆に且つクールに自然と女王気質が滲み出ていて終わる頃には新規客をメロメロにさせていた。
その時のお客様は今でもしっかり常連さまで居る。




オーナーにも耳に届いたようでフラッとお店に来てはフラッと接客を覗き見されていたなんて。
後になって聞かされ一気に恥ずかしくなったのを覚えてる。








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