
イラクサの棘
第20章 きっかけ
はじめて翔さんと出会った場所。
背後から
いきなり自販機のボタンを押されて
見知らぬ人から差し出されたジュースを
受け取った、あの日
「潤の首筋の二つのホクロの位置が
あの絵に描かれてる位置にそっくりな
ところにあったんだ。」
「俺の、ここの?」
気に留めてもなかった2つのホクロ
「潤の後ろ姿、やや斜めから見ると
まつ毛がすっげえ長くて
驚くほど描かれてる人とよく似てるって思ったよ。」
絵の中の人物と俺が?
そっくり?俺と同一人物ってこと?
先生からそんな絵の存在の事も
聞いたことがない。
「紹介された時、潤のことはほんと
なんにも聞かされてなくて
俺も、まあ正直、イケスカない野郎なら
断ってやろうって思ってたんだけど。
何度か待ち合わせして
潤と話してるうちにもっと潤のことを
知りたくなってきたよ。
だんだんとおまえが
潤があの絵の中の人物であってほしいって
そう願うようにもなってた。」
「願うように…」
触れたい衝動
二次元の絵画の中の人物が
魂を持つ触れ合える存在だとしたら?
「潤と列車に乗って旅が始まった日の
夜、酔っ払って泣きながらいろんな話しをした
潤の告白で俺は、確信したんだ
あの絵に描かれてるのは潤、おまえだって。」
泥酔して酩酊するほど酔っ払って
記憶を失った挙句に、翔さんに抱きついて
眠り込んでしまった旅の始まりの夜。
