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恐る恐る目を開くとそこには美鈴ちゃんの姿は無く、代わりに金と白の風変わりな衣装を着た金髪の巻き髪の女性が立っていた。
なんだか見覚えがあるような…
何かの写真で…そうだ教科書だ！

「クリストキント？」

まだ僕がサンタクロースになる前、高校生の時に英語の教科書でクリスマスについての英文を読んだ時に出てきた。
確かドイツ南部、オーストリア、スイス、ハンガリー、チェコ、スロバキアなどに伝わるクリスマスの天使だ。
確かサンタクロースのライバルだったはず。

「そう。私はクリストキント。あなたたちサンタクロースのライバルと言われる存在です。」

確かに美鈴ちゃんがクリストキントであるのならばあれだけの薄着でも説明が付く。
だって彼女は人間では無いのだから多少の寒さだって平気のはずだ。

「美鈴ちゃん…じゃなくてクリストキント。何であなたがここにいるんです？あなたも僕と同じようにプレゼントを配る役目があるはずですよね。」

「柊一くんも知ってるでしょ？プレゼントを配る役目のサンタクロースと本部でプレゼントを仕分けするサンタクロースがいること。それと同じよ。私はプレゼントを仕分けするクリストキント。だからクリスマス当日には仕事が無いの。」

「なるほどね。」

それは分かるが僕が本当に聞きたいのはそういうことじゃない。
なぜ、クリストキントが幼い女の子に化けて僕に会いに来たのか？
そこが1番の疑問点だ。
それに気付いたのかクリストキントは笑って言う。

「クリストキントの本部が言っていたんです。最近、サンタクロースがきちんと仕事をしているかって。ライバルとはいえ同業者。
サンタクロースも仕事してくれてないと私たちの仕事にも支障をきたす。それでこっそりあなたの仕事ぶりを見極めさせてもらいました。」

「それで？」

クリストキントは僕を真っ直ぐ見つめた。

「ハッキリ言って素晴らしかったよ。」

「え？」

「子供のことを1番に考えていた。私にもコートを貸してくれて最高のプレゼントもくれた。そして正しい心で純粋だった。サンタクロースの素質は充分よ。」

僕はどういう顔をすれば良いのかよく分からない。
そんなひどい顔をしていたのかクリストキントはおかしそうに笑って言った。

「そんな顔をしないで。褒めてるのよ。立派なサンタクロースだって。」

「ありがとう。」

僕は微笑んだ。